東京大学大学院理学系研究科附属植物園
home トピックス 【当園の研究紹介】ヒメコブオトシブミはアカソ(イラクサ科)の葉の形や大きさに応じて2種類の揺籃を作る
【当園の研究紹介】ヒメコブオトシブミはアカソ(イラクサ科)の葉の形や大きさに応じて2種類の揺籃を作る
研究・教育活動
2023.07.20

植物の葉は、葉を綴ったり巻いたりして自身や子供のための隠れ場所や住処を作る様々な昆虫に利用されます。本研究では、メス成虫が葉を巻いて子供のための餌かつ住処となる「揺籃」を作る甲虫ヒメコブオトシブミ Phymatapoderus pavens (オトシブミ科)に着目しました。 研究の結果、この昆虫はイラクサ科の草本アカソBoehmeria silvestrii に、葉の大きさと形に応じた2 種類の揺籃を作ることがわかりました。 メス成虫は、葉が小さく切れ込みが弱い場合は葉全体を用いて揺籃を作りますが、葉が大きくて切れ込みが深い場合は片方の側裂片のみを用いて揺籃を作ります。メスは葉が巻く前にどちらのタイプの揺籃を作るかを決めて、異なる加工方法で揺籃を作ることも示唆されました。同じように葉を巻く別種のムツモンオトシブミ Apoderus praecellens が、アカソと類似した葉の形を示すハクサンカメバヒキオコシIsodon umbrosus var. hakusanensis (シソ科)に揺籃を作る場合と比べると、ヒメコブオトシブミは側裂片に揺籃を作れることにより、より切れ込んだ葉にも揺籃を作成できていました。これらのことから、たとえ同じような形の葉をしていても、昆虫の加工行動の違いや葉の葉脈構造の違い、昆虫と葉の相対的な大きさの違いによって、寄主利用のしやすさに大きな違いがもたらされうることが示唆されました。論文掲載ページはこちらからご覧ください。

ご寄付について