東京大学大学院理学系研究科附属植物園
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【当園の研究紹介】ミャンマー調査で得られた温室植物Agapetes grandiflora(ツツジ科)の紹介
研究・教育活動
2023.08.24

1782年に創刊され、現在も英国キュー植物園から継続発行されているカーチスのボタニカル・マガジン(Curtis’s Botanical Magazine)最新号に、公開温室で栽培しているAgapetes grandiflora(ツツジ科)を紹介した。植物画はキュー植物園の専属画家で、日本滞在時には小石川植物園で植物画教室講師も務める山中麻須美氏が描いている。

カーチス・ボタニカル・マガジンに掲載されたAgapetes grandiflora の記事と植物画

Agapetes grandiflora (6号温室)

小石川植物園では、植物多様性研究プロジェクトの一つとしてミャンマーでの植物調査・研究を行って来た。今回発表したAgapetes grandifloraはこの調査を通じて日本に導入されたもののひとつで、日本で開花してはじめて分類学的研究が可能となった。最初の成果は2016年に「ミャンマー植物についての新知見(9)」(英文)として発表され、2新種Agapetes oxycoccoidesおよび A. pentastigmaに加えA. burmanica(今回の論文でA. grandifloraと訂正)、A. hiliiA. setigeraを写真とともに報告した。前3種は現在も小石川植物園の温室6で栽培展示されており、これらを継続観察することによって、Agapetes属ではじめて花外蜜腺の存在を明らかとし、2022年に「Agapetes(ツツジ科)の花外蜜腺」(英文)を発表することができた。花のつぼみがまだ小さい時期から、萼の先に甘い蜜が分泌されるのが特徴で、花が咲くといったん分泌がとまるが、若い果実ではふたたび萼の先に蜜が出る。また、新芽が伸びる頃には、若葉の付け根や縁にも蜜の粒がついているのが観察される。ツツジ科の花外蜜腺はAgapetes属に近縁なコケモモ属Vacciniumでも知られており、温室内のムニンシャシャンポ(温室1で展示)が咲く時期には花序や周辺の若葉にびっしりと蜜滴がついているのを見ることができる。

元小石川植物園園長 邑田仁(東京大学名誉教授)

参考文献(発刊から2年が経過した論文は全文公開されています)

田中伸幸, 大井・東馬哲雄, 邑田裕子, M. M. Aung, 邑田仁. 2016. ミャンマー植物についての新知見(9). 植物研究雑誌 91巻 suppl号 p.99-111.

邑田仁 , 邑田裕子. 2022. Agapetes(ツツジ科)の花外蜜腺. 植物研究雑誌 97巻 3号 p.180-184.

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